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   マンション大規模修繕ー直結給水と専用部給水工事ー

 築22年マンションの第2回目大規模修繕の取り組みは、終の棲家をめざして給排水をいかに盤石にするかがテーマであった。大規模修繕メンバーおよび理事各位の献身的努力で無事終えた。老残の身で感想を記しておきたい。

 20年位前だったか横浜水道局から受水槽を使わず直結給水の勧めが出た。横浜の水は神戸と同じく美味しい水である。それを受水槽にためて、カルキ他で消毒し増圧して各戸に給水するのは不自然である。中には浄水器を付けている人もいる。衛生面、管理費用の問題もある。理事長を拝命して何とか改善したかったが、築5年では初期費用がかかりすぎる、勿体ないという意見も出て中止した。今回は直結増圧給水ポンプを設置し給水管も更新する工事が行われた。全戸断水、各戸断水を経て工事は順調に進んだ。高度成長期の目に見えない給排水管工事はいい加減なものもある。築5年で共用部の漏水が出た。地中配管R部のピンホールが原因と説明されたが信じられなかった。
 1か月前に直結工事は終了した。取水管を太くし増圧するなど改善されて水圧も以前より強くなった、なによりそのまま飲めるのが嬉しい。

 4年前から漏水が出だした、すでに6件。なかには継ぎはぎだらけの室内配管でR部から漏水したものもあった。杜撰な工事で本来なら施工店に損害賠償できるもの。高度成長期の施工店は雲散霧消したものもある。

 大手ゼネコンは建築の品質を施工店ともども造りこむことが必要と、TQC(全社的品質管理)を導入し、品質だけでなく原価、安全、生産性などの改善活動を進めていた。地震で建物が倒壊すれば、強度計算をしっかりするように建築基準法を改正された。中には自社基準をさらに厳しくしたところもある。漏電で火災が起これば、点検が義務付けされた。ガスも不祥事が起きて改善は機器含めて安全体制は進んだ。水は水質の検査はされるが漏水の点検は誰もしてくれない。マンションの管理は給排水設備が肝要と言われてはいるが、これに真面目に取り組む管理会社、管理組合は少ないらしい。

 

 専有部分の給排水管の工事は本来なら各戸が負担すべきだが、一時金徴収は難しい。修繕積立金を流用して、全戸の工事が行われた。しかしマンション総会では揉めた、共用部の漏水は保険でまかなうが専用部は保険をかけている人は少ない。漏水はその住戸の責任だがいざ被害が出ると割り切れないものがある。

 給水・給湯配管の耐用年数は25年から30年である、専用部の配管を更新するのではなくクリーニングするなど延命修繕はできないのか。住み続けた住戸でなく、賃貸、売却の住戸が漏水するのではないか。

 時期尚早、反対など意見は百出したが、マンション全体の資産価値維持のためには全戸が専用部の工事をすることが必要と最終的には纏まった。

 

 工事は2か月にわたり行われる。原則は一日2戸。時間は9時から5時まで。事前に各戸に調査があった。メーターボックスから、壁に穴を開けて水と湯のボリブデン管2本を天井、壁などを潜り抜け風呂場、洗面所、トイレ、台所など水回りに配管工事をする。従来はフロアーからの配管であるが、今回は天井からに変わる。壁、天井などに30cm平米の施工兼点検穴が10個くらい開く。みっともないが致し方ない。それよりも作業スペースが1mくらい必要だから点検口の近くの家具類は移動させねばならない。爺婆ではぎっくり腰になるかもしれない、業者が担当してくれる。捨てることが嫌な人は溜まりものが多い。これを機会に整理・整頓と思うが、想い出のあるものは捨てきれない。

 台所、洗面所など開口部分は荷物を取り出さねばならない。随分不要なものがある、しかし什器など貰い物などは捨てきれない。

 

 工事当日は9時過ぎに業者が来て、入念に養生をする。点検口の所は1m近く作業場がいる。机、ベッドなど家具を移動して養生を済ませる。メーターボックスから穴を開け配管する。鋳鉄管と違いボリブデン管はしなやかに曲がる。10か所の施工・点検口から管を風呂場、洗面所、トイレ、洗濯置場、台所と通して終わる。午前休憩、昼食休憩、午後休憩と作業員がたっぷり休むのには感心した。

一日断水で飲物、食事は何とかなるがトイレはよそで借りなければならない。男は管理事務所のトイレで用を済ますが、女性は嫌がる。よその家のトイレを借りる人、近くのコンビニまで行く人いろいろ。トイレを心安く貸す人は少ない。掃除もさることながら要介護の人がいる住戸はトイレの汚れが目立つ、傷だらけの所が多い。男性の大規模修繕委員では女性の心情を忖度できなかったこともある。その昔は「便所を見れば嫁の出来が分かる」とも言われていたくらい。

 30cm平米の穴を開けるのに音と埃が出る。一日在宅してもらいたいとの要請で部屋にいるものの落ち着かない。嫌がられるかもしれないが現場の施工状況を見て歩いた。鋳鉄管から化成品のボリブデン管に変わった。管と管のコネクターは優れもの、簡単に接続できる、漏れることはないそうだ。洗面所とか台所は奥の開口部に身を潜ませねばならない。スマートでしなやかな人でないと作業はたいへんである。現場監督の人はマスクをしているが、穴あけとか工事を担当している作業員はしていない。アスベスト?の埃でも吸い込めば体に悪いが、カッコよさの方が大切みたいだ。

 管理事務所に施工会社本社からの通達として「HRF」という注意事項が貼ってあった。作業員の労災事故低減のヒヤリハットかと思ったが、在宅の人が養生につまずいたり、工具にぶつかったりする事故もあるみたい。安心・安全に気配りは当然だが、あの手この手でこの種の再発防止を心がけてもらいたい。

 

 1戸1日、50万円であるが、さらに生産性向上は出来るだろう。一日2戸でなく一日4戸行えば一月で済む。せめて半日、3から4時間で終えてもらいたい。養生専門にするチーム、穴あけをするチーム、配管するチームなど専門化して順番に各戸を廻る。問題は家具の移動とか、台所・洗面所など整理が行き届いていないところがあること、そこは後回しにして全員で後から実施する。

材料、道具は驚異的な進歩を遂げている。人間さまは進歩していないのでは?業者も住民も知恵を出せば、さらに安心・安全な工事が短時間で安価にできるとは思う。

未だ使用できると思ったが洗面所と台所のシングルレバー混合水栓を交換した。たかが水栓されど水栓これが20年前から進歩している。感心したことは定期的な点検をして水まわりの水漏れを防いでほしいと取扱説明書に書いてあること。保証期間は2年間、部品保有は10年間。

専有部分の給水管・給湯管更新工事の欠陥・漏水の瑕疵保証期間は5年間である。その後はどうするのか? 水栓メーカーでも取扱説明書で自主点検を進めている。施工業者は自主点検を薦めない? 専有部分は「自分の城は自分で守る」気概が必要である。1戸建ちであれば人任せにはしないであろう。管理組合、住民は自衛で自主点検を進めたほうが良い、チェックリストを作成し、「漏水ゼロ作戦運動」を展開する。
 それだけでは漏水事故は減らない。近所のマンションで奥さんに先立たれた傘寿の老人、シンクは食器が占領し水の止め方が甘い。階下に水が漏れたこともある。住民の意識喚起も含めて行う必要がある。
 良いことばかりではない。壁に点検口の穴が開いている、みっともないのは我慢するにしても、給湯管が伸びたことでお湯の出るのに時間がかかる。これは予想外、エコ混合水栓に更新して水道代が節減できると思ったが甘かった。

 

消費税が上がる前に早すぎる水回りの更新ができた、しかも「配管の見える化」も進んだ。雑排水配管の更新は見送られたが、30年後?に給排水管更新と併せて施工されれば専用部分の水回りは盤石である。マンション躯体は100年持つ、建て替えせずとも資産価値は維持できよう。不動産会社は我が中古マンション広告で「水回り専用部分更新済み」と巧みに宣伝している。マンションの価値は管理にある、資産価値を維持すれば、転売・贈与・相続で喜ばれるだろう。

マンション住民のコンセンササスが困難な工事を修繕委員、理事各位が精力的にこなしてくれたことに多謝。

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