ヴェリコタルノボ アルバナシ


 

            5 ヴェリコタルノブ、アルバナシ

 朝はホテル近くの職人街を散策した。石畳の両側に小さな店が並んでいる。銀細工、銅製品、木彫り、陶器など職人が自ら創作した物が多い。菓子食品の店もあった。ブルガリアらしくかつ安くてうまいもの、ガイドが推薦したものを皆買った。土産用に試食したがその時は良くてもバッグに詰め込んだら変形した。味は変わらなかった。

 ツアラベツの丘に行く。もとは宮殿があったところ、見晴らしが良い。トルコ軍になぜ敗れたのか、城壁や宮殿の遺跡を見ながら考えさせられる。王様の栄耀栄華は後継者育成がされていなかったから?
 ヤントラ川が蛇行している、川べりの崖に建物が所狭しと並んでいる、一幅の絵になる光景だ。ヴェリコタルノブはブルガリア人にも一番人気のある街、中欧でも最高の眺めという人もいるのは良くわかる。ホテルから眺めたもやが立ち込めた朝はすばらしい。

 ヤントラ川が蛇行する中州にアッセン王のモニュメントがある。中世にはバルカン半島全域を支配したアッセン王を敬愛して建てたもの、景観に彩りを添えている。王様が偉大で兵士も勇敢であった、それが王様の死後衰退した。トルコ、ソ連に蹂躙されたその歴史にブルガリアは学んでいるのであろうか。アッセン王のモニュメントを見て王様は歯ぎしりしていると思う。

 ツアーの予定では午後は自由時間であった。しかしここまできてアルバナシに行かない手はない。タクシーで行くと言うと、添乗員がツアーメンバーに参加の意向を募った。大半の人が賛成したのには驚いた。新市街、旧市街の散策の予定がアルバナシに変更になった。あとからアルバナシに行けて良かったと言う人もいた、これはツアー企画のミスであろう。経験5年の添乗員は今までに一度も訪れていなかった、しかしお客の要望を聞き本社と折衝した添乗員の行動力は賞賛に値する。

 ヴェリコタルノブの街から北へ4kmの丘の上にあるアルバナシ村。素朴な田舎の村である、今も古い家が文化財に指定されている。そこに聖誕教会がある。教会とは思えない古臭い長屋のような建物。あまり人は来ないのか、鍵がかかっていた。しばらくして管理人のオバサンが現れ開けてくれた。中に入れば部屋の全面が極彩色の壁画である。来てよかった素晴らしい、感慨にふけるひと時を持てた。旧約聖書の画面がいろいろ2千画面とか、描かれた人もいろいろ5千人とか信じられないほど。「人生の輪」は有名な壁画、太陽を中心に東西南北、春夏秋冬、生老病死、12ヶ月が描かれている。仏教の輪廻転生も言ってみれば人生の輪でもある。メキシコのアステカの暦も25トンの石に太陽の神に捧げられた巨大な彫刻である。東西南北、風・水・炎・地震、さらに動物、植物が掻きこまれている。その昔世界のどこでも人の考えることは同じであった。

 登場する人物も多彩である、異教徒のギリシア哲学者もいる。「最後の晩餐」も食卓の上に食器がならび、手掴みで食事を分けるところが描かれている。表現の自由が頑なな教会壁画にあって面白い。民主主義は表現・言論の自由が基本である。

 村の広場で女の子が民族舞踊の稽古をしていた。幼少の頃から踊ればリズム感も育まれるだろう。昔は日本でも盆踊りのときなど練習したものだ。

 アルバナシの解説書がないか、添乗員とガイドに尋ねた。二人とも知らなかった。職人街を歩いているときアルバナシの本を見つけた。ブルガリア語、英語、独語、仏語で解説が書いてある。本の冒頭に「ここを訪れた人は、永久にその思い出を忘れないであろう」と書いてあった。全くその通り、アルバナシを見ずしてブルガリアを語るなかれ。

 
       
      ヤントラ川の崖にそそり立つヴェリコタルノブ市街      ヤントラ川の朝靄に霞む市街     職人街 金・銀・銅細工 陶器 織物 木彫り 皮革
       
      ツアレヴェッツの丘     トルコ軍に破壊された頂上の宮殿と城の跡      アッセン王のモニュメント  旧市街を睥睨
       
      アルバナシ生誕教会 中は極彩色のフレスコ宗教画に満ちる     教会内のフレスコ画 「人生の輪」   絵葉書より      メキシコ 「アステコの暦」   模型より
       
      道端で教会フレスコ画 の模造画を販売     文化財に指定された村の邸     村では踊りの練習が盛ん

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